紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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  「害虫防除の常識」    (目次へ)

    2.有害生物(害虫)管理にあたって守るべき事柄

     3) 農薬を生産者、消費者、環境に対して安全に使用するには

 農薬は、動植物の繁殖を妨げ致死させたり、環境汚染を引き起こす可能性のある成分を含むものが多いので、安全性を確保するために、農薬使用に当たって守るべき事項や基準が農薬取締法に基づく農林水産省令で詳細に定められている。

 農業者が、農薬を使用する場合に守るべき事柄は次の通りである。
(1)人や家畜に危害を及ぼさないようにする。
(2)農作物に薬害を生じないようにする。
(3)農作物への残留によって人(消費者)や家畜に危害を及ぼさないようにする。
(4)農薬による土壌汚染を起こさないようにする。
(5)農薬が公共用水域(河川、湖沼、灌漑用水、海など)に流れ込んで水産動植物(魚、エビ、藻類など)に被害を与えないようにする。
(6)農薬が公共用水域に流れ込んで水質汚濁を起こしたり、そのことによって人や家畜に被害を与えないようにする。

 また、農薬を使用する者は、農薬の容器等に表示されている農薬の使用方法についての表示事項を守らなくてはならない。すなわち、食用および飼料とする農作物に農薬を使用する場合には、次のことを守る必要がある。

(1)その農薬を適用農作物以外には使用してはならない。

(2)単位面積当たりの農薬使用量の限度(例えば、150リットル/10a、20aならば300リットルになる)を超えて使用してはならない。

(3)農薬は通常希釈して用いるが、その場合に定められた希釈倍率よりも濃い濃度で使用してはならない。

(4)農薬は定められた使用時期以外には使用してはならない(例えば、植付け時、育苗期、生育期、収穫○○日前などと定められている)。

(5)農薬を適用農作物に使用する場合に、含有する有効成分の種類ごとに定められた総使用回数を超えてはならない。育苗時に適用農薬を用いた場合に、その有効成分が生育期に使用するものと同じであるならば、生育期に使用できる回数は、総使用回数から育苗時に使用した回数を差し引いた回数となる。

(6)農薬の最終有効年月を過ぎたものは使用しない。

(7)臭化メチルくん蒸剤を使用する場合には、毎年度、使用する最初の日までに農薬使用計画書を農林水産大臣に提出しなければならない。なお、臭化メチルの使用は、オゾン層を破壊する物質であることから国際機関の承認が必要であるなど、その使用が困難になっているので、臭化メチルに替わる防除技術を取り入れる必要がある。なお、臭化メチルに頼らざるを得ないという「不可欠用途」についても、「不可欠用途臭化メチルの国家管理戦略」において、「メロン、スイカ、キュウリ、トウガラシ類の土壌伝染性ウイルス」および「ショウガの根茎腐敗病」について、2013年に全廃するという目途が定められた。

(8)航空機を用いて農薬散布をする場合には、毎年度、使用する最初の日までに、農薬使用計画書を農林水産大臣に提出しなくてはならない。

(9)住宅に近接する農地で農薬を使用する場合には、農薬の飛散を防止する方法を講じなければならない。

(10)水生動植物等に影響を及ぼすとして省令で定められている農薬(水質汚濁性農薬)を水田で使用する場合には、その農薬が水田から流出するのを防止する方法(湛水など)を講じなければならない。

(11)クロールピクリン、臭化メチルを含有する土壌くん蒸剤を使用する場合には、農薬の揮散を防止するための方法(シートで土壌表面を覆うなど)を講じなければならない。

(12)農薬使用者は、農薬を使用した時に、使用年月日、使用場所、使用農作物、農薬の種類又は名称、農薬の単位面積当たり使用量、希釈倍率を帳簿に記載するように努めなければならない。

 <農薬の常識> 

農薬の毒性表示:農薬の容器に、人に対する毒性のランクとして、「毒物」、「劇物」、あるいは「普通物」(強い順)のいずれかが書かれている。同じ防除効果が見込まれるのならば、人への毒性の低い農薬を使うべきであろう。ただし、同じ、あるいは同じ系統の農薬を使い続けると病害虫、雑草に薬剤抵抗性がつくことがあるので、その兼合いも考えて、使用する適用農薬の種類、回数、順番を上記の規定を守って決める必要がある。人に毒性のある農薬を使用する際には、防水性の衣服、長靴、マスクなどの防護用具の着用が記載されているが、これを守ることは、農薬使用者が農薬による健康被害を受けないようにするために必要不可欠なことである。

農薬の魚毒性:農薬が河川、湖沼等に流れこんだ場合に、魚類等への影響が出る可能性がある。そこで、魚類ではコイ、甲殻類ではミジンコを検定動物として魚毒性のランクが定められ、農薬の容器に書かれている。魚類等への影響の大きいものから順に、魚毒性C類、Bs類、B類、A類とランク付けられている。魚毒性C類は、魚毒性が最も強いことを表していて、水系に流入あるいは飛散する場所での使用は規制されている。魚毒性B類あるいはBs類も魚毒性があるので、養魚田等に流入したり、飛散する可能性のあるところではこれらの農薬の使用を避ける。

 関連情報: 農林水産消費安全センターHP「登録農薬有効成分の魚毒性・毒性一覧
         財団法人九州環境管理協会HP「農薬の毒性と安全使用基準

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